こんにちは。不登校支援の現場から、今回は「人とうまく付き合えない」と悩んでいた高校生のケースをご紹介します。
彼のように、集団になじめず「普通」と言われることができない子が、自分のやり方で力を発揮していくまでのお話です。
「なんで、みんなはできるのに…」という苦しさ

彼は、見た目はとても穏やかで真面目な高校生。ですが、小学校の頃からずっと、「集団の中でうまくやる」のが苦手でした。
掃除当番や体育のグループ活動では、自分の意見が言えず、なんとなく浮いてしまうことが多かったようです。
本人は真剣に取り組んでいるのに、なぜか「やる気がない」「話を聞いてない」と受け取られてしまう。そんな誤解が続き、先生や周囲との距離がどんどん開いていきました。
最初のステップは「人を信じてみること」
支援を始めた当初は、こちらが話しかけても、うつむいて返事はポツリポツリ。「どうせ分かってもらえない」という思いが強く、心を閉ざしているように見えました。
でも、好きなことや興味のあることの話をしていくするうちに、少しずつ表情がゆるんできました。
彼は、実はとても創造的な子で、イラストを描くのが大好き。線の引き方や色使いに、独特の世界観があって、「これ、ほんとに高校生が描いたの!?」と驚くほど。
「苦手」が武器に変わる瞬間

あるとき、当団体のプログラムで、小学生と関わる機会がありました。
「イラスト教えてあげてほしい」とお願いすると、最初は「ムリです…」と緊張していましたが、いざ始まってみると、彼は小学生のペースに合わせて、やさしく教えていました。
このとき、彼の「自分の世界に集中できる」「相手に無理強いしない」という特性が、見事に活きたんです。
本人も「こういうやり方なら、ぼくにもできるんだ」と小さな自信を持てたようでした。
「普通」にならなくていいんだと気づくまで
このケースの大きな転機は、「“普通の人”になろうとしなくていいよ」と伝えたときだったと思います。
彼はそれまで、「みんなみたいにうまくできない自分はダメだ」と思い込んでいました。でも、人とは違う感覚やペースのままでも、活躍できる場面があるんだと、経験を通して知っていきました。
最後に:保護者の方へお伝えしたいこと
もしお子さんが「人付き合いが苦手」「集団がしんどい」と感じていたとしても、それは“性格の欠点”ではありません。
社会の中ではまだまだ“普通”が優先されがちですが、実はその子の持っている感覚やこだわりこそが、将来の武器になることもあります。
「この子はこの子なりのやり方で生きていける」と信じて関わっていくことが、回復のいちばんの鍵になると、今回のケースでも改めて感じました。